Keep your focus

12/25

朝、紀里はサンタが気になりいつもより早く起きた。
前日に用意しておいた袋を確認させると、
「入ってる！プレゼントあるよ！パパ！。ヤバイネ！」
と騒ぎだした。いつも低血圧っぽい起き方をする紀里が朝からハイテンションだった。

保育園に連れて行くと早速友達たちとサンタが来たことを報告し合っていた。
家に帰り締め切りの原稿をひたすら。年明けの展示用の作品の制作を。
フィルムにプリントし、Flextightでスキャニング。小さなウェブの画像がネガとして機能するのか、ひたすら様々な方法で実験する。

夕方紀里を連れて愛育病院へ。
夕食を買おうと近くのナショナルマーケットへ行ったが物価が高すぎて何も買えず。。。

家に帰るとEdgar Martinsの「TOPOLOGIES」が届いていた。
まるで違う惑星を見てるような美しさに胸が高鳴る。良い写真集だと思えた。

紀里はひたすらサンタからもらったパッションハープを奏で続けている。

12/24

産まれてから二日が経ち、顔も少し落ち着いてきていた。
産まれた時は3400グラムもあった体重が今は3000まで落ちている。その分、少し顔も締まったような気がする。

保育園に紀里を迎えに行き、そのまま愛育病院へ。紀里はゆきちゃんと妹に会うのが本当に楽しみだったようで、異様にハイテンションになっていた。

病院を出て車に乗ると、「明日も来ようねぇ。。。」とちょっとべそをかきはじめた。きっとちょっと寂しいのだろうと思う。家ではいつもよりも僕から離れようとしなかった。

風呂に入り、大きな袋を用意すると「サンタ来るからもう寝るわ。パパも寝ないとサンタ来れないから早く寝てね。」と一人で布団に入って寝始めた。

12/22

さきほど、8:20分。第二子となる女の子が産まれた。

深夜連絡があり病院に向かった。到着すると破水、分娩室に移ったゆきちゃんと会うことができた。
僕は最後まで立ち会うつもりではなかったのだけれど、結局のところ出産までの始終を目に焼き付けることとなった。

今は徹夜明けでちょっとぼーっとするからあまり上手く書けないけれど、僕の手を強く握り、陣痛に耐えたゆきちゃんの爪痕が残る右手にはそれがまだ意識として残っている。

産まれたばかりの赤ん坊は、懸命に泣いていた。
今は、まだそれくらいしか書けない。

心配頂いたみなさん、ありがとうございました。

12/21

産まれる兆候もあまりないまま、病院へ入院することに。神戸屋キッチンでサンドイッチを買い、NATIONALでV8の野菜ジュースを買って二人で病室で食べた。当然だけれど、回りは小さな赤子がたくさん居る。あんなに小さかったんだっけ？と驚くほど小さい。
記憶の中の生まれたての子供は、生後二週間くらいの姿にすりかわっている。それはきっと、やっと自宅に全員が揃い、僕が心ゆくまでRZ67で写真を撮ることができたのがそれくらいの頃だったからだろう。

仕事を片付けるため、目黒通りを走ると夕焼けがきれいだった。
久しぶりに一人で過ごす夜。夕食をどうしようかと考え、ステーキリベラで肉でも食って景気をつけるかとダウンを着て向かうと定休日。
結局近くの鶏肉屋でもも肉を買い、一人分の鳥鍋を作って食べた。

12/18

明日の19日が出産予定日。ここ何日かはなんとなくそわそわとしてしまい、仕事が手に着かない。集中力も途切れがちだ。紀里も、犬のモモでさえなんだか落ち着きが無いように見える。モモは昨日の地震が怖かったらしくゆきちゃんの側を離れない。

なにかを考えているような気がしてるんだけど、ただぼーっとしているだけという状態によくなっている。

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ニコンカレッジでの講座ですが、空きはあと4人となりました。
申し込み検討されている方はお早めに。

http://www.nikon-image.com/jpn/activity/nikoncollege/

追記：講座の空きは、あと二名になりました。（16:30の時点で）

12/12

結婚式に出ると、なんか一人一人にそれまでの人生があって、家族がいて、未来があるというのをなんとなくリアルに感じることができる。
親父さんが泣いてるのを見ると、既に何十年後かの自分を見ているようで泣けてくる。

子供は親の物じゃあないんだよなぁ、としみじみ思いながら家に帰ってきて電気を付けずに上がったら、なぜか飼い犬に泥棒かなにかと間違えられて咬まれた。
そんなにスーツ姿は異様なのか。

電気を付けて僕だと確認した犬は真っ青に（本当にそんな感じだった）なりすぐさま自分の小屋に入り気配を消していた。無言でウイスキーのロックを作っていると、「キューン。」と謝り出す。「やめろ。」と言って突き放すとまた小屋に戻っていった。これも僕にとって（犬にとっても）大事な瞬間だったのかもしれないと思い、許してやることにした。（番犬性能としては合格点だし。）

12/11

ハッセルブラッドの60mmが撮影中に絞り込みプレビューの状態から戻らなくなり、途中からフォーカスを合わせ、その後絞るという4x5的な状態に。。。
撮影後、梱包して修理へ出す。年内の復帰は難しいかも、という回答が。。。
戻ってくるまではRZを主体に考えなくてはいけない。

紀里が着物姿を撮って欲しいというのでバック布を引いて撮影。モノブロックを立てて光を当てると、シャッター毎にポーズを変えていく。勘の悪いモデルを撮るよりもずっとテンポが良い。そういうリズム感は子供のほうが優れているところもあるのかもしれない(その代わり、こちらの言うことは一切聞かない）。着物のせいか、なぜか歌舞伎とか能みたいなポーズをとる。あんまり見せたことない気がするんだけど。NHKの「日本語で遊ぼう」の着物の子供の真似をしているんだろうと思う。

今日はゆきちゃんが何かの打ち上げに夜出て行ったので、二人で近くの焼き鳥屋に行った。スタンダードなハードロックの掛かっている店で、紀里はエアロスミスのCryin'やボン・ジョビのI'll be there for youに合わせて盆踊りのように踊り続け、店中で人気者になっていた。終いには手羽先をどこかでもらって帰ってきていた。「ここ、最高だね。ママには内緒でまた来ようね！パパがウイスキー飲んでるの内緒にするから。」と子供ながらに脅迫まがいの交換条件を満面の笑顔で持ちかけられた。

12/9

午前中にいくつかの仕事を済ませ、昼に渋谷で打ち合わせ。
その後、シブヤ西武の画廊に寄り、パルコファクトリーへ。
「SHOOT: Photography of the moment」
moment、という言葉を聞くと一瞬カルチェ・ブレッソンが頭をよぎる。実際の内容はそんなことはなく、元TOKIONの編集長がキュレーションしたストリートやサブカルチャーといった流れを組む作品の多い写真展だ。

http://www.parco-art.com/web/factory/shoot0911/index.php

出展者はファッションやカルチャーに興味のある写真愛好家には豪華な面子だといえる。
一人数枚の写真で軽やかに構成された展示は、なんだか映画のショートフィルムの特集のような印象を受ける。展示そのもののセレクトも、各写真家がその時見せたいものという感じでどこかゆるい抜け具合があって僕自身は（物足りなくも）その時の気分にはちょうど良かった。渋谷に来ると確実に人酔いして気持ち悪くなるのでそれも大きかったのかもしれない。

個人的にはヨーガン・テラーとティム・バーバーの写真が輝いて見えた。
ストリートやサブカルチャーにはMomentという言葉が良く似合う。今回の展示では特にそう思えた。写真家それぞれが「その時」をどう見つめたのか、その場に居たのだ、という空気感が良く伝わってくる。

その一瞬があった、というイメージが強く心に響くという意味では観察的で静謐な視点を持つベッヒャー・シューレとは全く違った写真の強さがある。

それは、スティルライフとは対極にあるということだろうか。まだ上手く説明はできない。

12/7

午前中は原稿を書き、昼には終えると空が一層爽やかで、散歩がてら近くのレンタルビデオ屋で「GOEMON」と「路上のソリスト」を借りてきた。なんだか久しぶりにゆっくりとした時間を過ごしたような気がする。

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年明け、2月から全5回の講座をNikon Collegeで行います。
撮影テクニック講座という名目で、他の方が担当する講座では技術的な部分を教えて頂けるようですが、僕の講座では基本的に技術は教えません。やりたいことに対しての技術的アドバイスは行いますが、講座では主に様々な被写体に対して今までどのようなアプローチがあったのか、どのような考え方があったのかということを紹介していきます。

ですので、講義というよりは最終的にはワークショップのような問題解決や経験共有を目的としたものにする予定でおります。また、一応「風景」という主題で募集をかけておりますが、それもあまり関係ないと思っていただいたほうが良いかと思います。

3回の講義と2回の撮影実習があります。技術的なアドバイスは撮影実習の時のみ個々の問題に合わせて行いたいと考えています。

僕は、僕が思う写真について考え方を話します。
自由に制作したい方とは毎回その作品の問題点や課題を話し合うことになると思いますし、新しい何かを得たいという方には何らかのアプローチの方法を話し合って行く場となると思います。

受付開始は12/14（月）10:00AMとなります。

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ニコンカレッジ
専門講座（夜間）
「コンセプトを持って風景を撮る」
講師　大和田良
2/5、2/19、3/5　金曜　18:30~20:30　講義（田町セミナールーム）
2/13、2/27　土曜　撮影実習　場所、時間未定

定員　20名
受講料　20,000円

その他詳細、申し込みにつきましては
http://www.nikon-image.com/jpn/activity/nikoncollege/

ニコンイメージングジャパン　ニコンカレッジ
03-3769-7960

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12/4

朝、紀里を送ってからお台場へ。周辺で撮影して回り、その後セントラルパークの山田さんのところへ。今一緒に作っている本のデザイン案を見せて頂く。とてもきれいな空気感のある構成で、書いたことや撮ったものが僕の手を離れて巣立っていく、良い予感のようなものがした。

作品も仕事もそうだけれど、一度世に出て行ったものはそれら個々のアイデンティティーを持って僕の手から遠い場所へ歩んでいく。それは、一度飛び出したものは修正も消去もきかないという証拠で、だからこそ僕はいつも何かに後悔しているし、同時に諦めのように過去を過去として捉える。

その「全て過去になってしまう」という思いが、僕を常にクオリティの追求に向かわせているように思う。だから何かを作れなくなって、何かを作れるようになっていく。

僕はいつも、写真て難しいよなぁ、とそればかり考えている気がする。そう思える内は、まだやれると思いながら。